2017年4月にVMware社からvSphere Data Protection(以下、VDP)の提供終了が発表されましたが、VDPを使用して仮想マシンをバックアップしているお客様から、移行先となるバックアップソフトを検討していると弊社にご相談いただく機会が増えてきました。
End of Availability (EOA) of VMware vSphere Data Protection (2149614)
https://kb.vmware.com/kb/2149614
そこで、今回はVDPからの移行先のバックアップソフトの候補の1つとして、Veeam Backup & Replication(以下、VBR)とVDPの違いやVDPから移行するメリットをご紹介したいと思います。
■VDPを使い続ける課題
まず、VDPを使い続けた場合の問題点を見てましょう。
(1)サポート期限
VDPのサポート期限は下記で公開されておりますが、VDPの最終バージョンの6.1はジェネラルサポートの終了が2020年3月12日、テクニカルガイダンスの終了が2022年3月12日となっています。
ジェネラルサポートとテクニカルガイダンスの違いは下の表の通りですが、ジェネラルサポートが終了すると新規のセキュリティパッチの提供や新規の不具合の修正が行われなくなりますので、セキュリティリスクが高くなり、障害が発生した場合に問題が解決しない可能性も出てきます。
https://www.vmware.com/jp/support/policies/lifecycle.html
(2)対応vSphereバージョン
次にVDPが対応するvSphereのバージョンを確認してみましょう。VMare製品の互換性は下記から確認できますが、VDPのバージョン6.1.8以降で6.5 Update2に対応しておりますが、6.7には対応していないため、vSphereを6.7にバージョンアップする際にはVDPから別のバックアップソフトへの移行が必須になります。
<VMware Product Interoperability> https://www.vmware.com/resources/compatibility/sim/interop_matrix.php
(3)対応Data Dmainバージョン
VDPのバックアップ先としてはVDPの仮想アプライアンスの仮想ディスクだけでなく、Dell EMCの重複排除バックアップストレージであるData Domainも利用できますが、Data Domainにバックアップしている環境ではData DomainのOS(以下、DDOS)のバージョンも考慮する必要があります。
Dell EMC社の互換性リストを確認すると、VDPの最終バージョンの6.1はDDOS 6.0までの対応になっており、DDOS 6.1以降には対応していないため、DDOSのバージョンを6.1以降にバージョンアップすることができません。
http://compatibilityguide.emc.com:8080/CompGuideApp/getDataDomainBoostCompGuidePage.do
Dell EMC社のKB(要:Dell EMCアカウント)で公開されておりますが、VDPにDDOS 6.1.xのData Domain を追加しようとするとエラーになります。
VDP: Adding a Data Domain with DDOS version 6.1.x to the VDP fails with error "Invalid hostname or credentials"
https://support.emc.com/kb/507577
下の表はDDOSのサポート終了日を纏めたものです。DDOS 6.0のサポート終了日は現時点では決まっておりませんが、6.0.1.xは既にサポートが終了しておりますので、DDOS 6.0のサポート終了日にも注意しましょう。
尚、DDOS 6.0のサポート終了日の最新情報は下記から確認してください。(要:Dell EMCアカウント)
https://support.emc.com/products/41097_DD-OS-6.0
■VBRに移行する理由(メリット)
次に、VDPとVBRの違いを見てみましょう。
(1)vSphereとData Domainへの対応
VBR 9.5 Update4ではvSphere 5.0から最新の6.7 Update1までの幅広いバージョンに対応しております。
https://www.veeam.com/veeam_backup_9_5_u4_release_notes_rn.pdf
Data Domainに関しても既にVBR 9.5 Update3でDDOS 6.1に対応しており、最新のVBR 9.5 Udpate4aでDDOS 6.2にも対応しました。
KB2926: Release Notes for Veeam Backup & Replication 9.5 Update 4a
(2)対応バックアップデバイス
下の表はVDPとVBRの対応しているバックアップデバイスを比較したものです。VDPは仮想アプライアンス、VBRはWindowsにインストールするアプリケーションという違いはありますが、VBRはVDPと比べて多くのデバイスに対応しています。
(3)アプリケーション対応
下の表はVDPとVBRの対応している仮想マシンのアプリケーションを比較したものですが、VDPはSQL Server/Exchange/SharePointだけになり、新しいバージョンにも対応できていませんが、VBRは最新バージョンにも対応しており、更にActive DirectoryとOracleにも対応しています。
※アプリケーションによっては、Service Packの要件もありますので、ご注意ください。
アプリケーションの対応内容にも違いがあります。VDPの場合には、仮想マシンに各アプリケーション用のソフトウェアをインストトールし、仮想マシン全体のエージェントレスのバックアップとは別にアプリケーション単位でもバックアップする必要があります。
重複排除によりバックアップデータは大きく変わらないとしても、仮想マシンにソフトウェアをインストールしなければならない点やバックアップジョブの数が増えること、バックアップ実行タイミングが重ならないようにするなど考慮すべき点は増えます。
それに対して、VBRの場合は、仮想マシンにソフトウェアのインストールは不要で、仮想マシン全体のエージェントレスのバックアップをするだけでアプリケーションを含めてバックアップすることができ、そのバックアップデータから仮想マシン単位・アプリケーション単位どちらのリストアもできてしまうのです。
(4)ファイルレベルリストア
VDPとVBRはどちらも仮想マシン全体のバックアップからファイル単位でのリストアができますが、そのファイル単位でのリストアにも違いがあります。下の表は対応しているファイルシステムを比較したものですが、VDPは対応しているファイルシステムが少なく、制限が多いのに対してVBRは多くのファイルシステムに対応しています。
実際のリストア操作においても、違いがあります。VDPはバックアップ対象の仮想マシンからブラウザでVDPのファイルレベルリストア用のサイトにログインしてリストアしなければなりません。
<VDPのファイルレベルリストア画面>
それに対して、VBRは管理サーバもしくは、リモート管理コンソールをインストールしたマシンからリストア操作ができ、バックアップ対象の仮想マシンからリストアしなければならないという制限はありません。
<VBRのファイルレベルリストア画面>
VDPのようにバックアップ対象の仮想マシンからブラウザを使用してユーザーにリストアをさせたい場合には、セルフサービスリストアの機能を利用すれば、VDPに近い運用も可能です。
<VBRのセルフサービスリストア画面>
(5)通知機能
VDPもVBRもメール通知機能がありますが、その内容には違いがあります。VDPの場合は、1日1回サマリーのメールを1通送信するだけになります。
複数のバックアップジョブを設定した場合でも1通のみになり、特定のバックアップジョブが失敗していた場合に対象のジョブを確認しづらいという問題があります。
それに対して、VBRはバックアップジョブ毎にメ―ル送信を設定でき、更に失敗した場合のみ通知する設定もできるため、どのバックアップジョブが失敗したのかが分かりやすくなっています。
(6)構成情報のバックアップ
VDPは仮想アプラインスとして提供されております。仮想アプラインス自体が壊れてしまった場合には、仮想アプラインスのデプロイ自体は簡単ですが、バックアップジョブなどの設定は全て再設定になります。それに対して、VBRは設定情報をバックアップする機能があるため、VBRのサーバが壊れてしまった場合でもOSとVBRのアプリケーションをインストールし、バックアップしておいた構成情報をリストアすれば、バックアップジョブやカタログ、認証情報などの設定を戻すことができるため、再設定が不要になります。
(7)スケールアウト対応
仮想マシンが多数あるような大規模環境では1台のVDPだけでは、バックアップを処理しきれない場合があります。そのような時、VDPの場合は追加のVDPアプライアンスを展開することになりますが、それぞれのVDPがバックアップ管理サーバ兼バックアップ処理サーバとなるため、各VDPにログインしてバックアップ設定をすることになり、運用も煩雑になります。
それに対して、VBRはバックアップ処理サーバ(Proxy Server)だけを追加することができるため、バックアップ設定は1台のバックアップ管理サーバにログインして行えば良いため、運用が楽であり、簡単にスケールアウトすることが可能な仕組みになっています。
以上のように、VBRにはVDPの問題を解決でき、更に多くのメリットがあります。ここでは書き切れませんが、VBRには他にも魅力的な機能が沢山ありますので、VDPから別製品への移行を検討している方は、VBRを検討頂ければ幸いです。
VBR以外にも弊社では多数のバックアップソフトを扱っておりますので、VBRに限らず、仮想環境のバックアップは弊社にお気軽にご相談ください。それでは、また。
担当:臼井